2012年9月29日土曜日

愛しのおっぱい

わたしは時々夢を見る。
これは夜見る夢の話なんだけど、転機を暗示するようなものとか、啓示的なものとか。それは滅多にないけど年に何回かある。

ある人はそれを正夢とよんだりする。

そういう夢を見るときは、普通の夢と違って、あ、そうなるんだなという確信というか実感がある。

その種類の夢を見るようになったのはシンガポールに絵が初めて売れた1996年の5ヶ月前。それは妊娠した夢だった。わたしは診察室にいて、お医者さんが振り返るなり、「安藤さんあなた妊娠5ヶ月ですね」と言う。わたしは「絶対にそんなことはありませ〜ん!」と答えるが、先生は「いえいえ確かにここにいます。」と言って、右手に持っていた黒のマッキーでわたしのお腹に空豆の大きい形をキュキュッと書いた。そして、わたしが「どうしよう〜。5ヶ月後には子どもが生まれる〜〜。」と叫んだところで目が覚めた。とてもおかしな夢だったけれど、あまりにもリアルだったので、不思議に思っていたら、ある人が、「妊娠する夢は新しいものを生み出すことの暗示だから、それが本当に実現するようにちゃんと祈って備えた方が良いよ〜。」とアドバイスをくれた。で、祈って待ってたら、ちょうど5ヶ月後に作品がシンガポールソニーの社長さんに買われた。それがきっかけでそれから4年後にシンガポールに行くことになる。

妊娠している時に、この夢に似たような感触の夢を二つ見た。
あっという間に生む夢と、おっぱいがぴゅーぴゅー出る夢。
だから、絶対ツルッとポンで生めるし、おっぱいもすぐ出ると思っていた。

出産は、お見事なほどスルッとポンと生まれた。でも、おっぱいはそうはいかなかった。

全然出なかった。

生まれて3日でピカリちゃんは生まれたときより13%も体重が減ってしまって入院中からミルクをあげ始めた。すごくかわいそうで一人病室で泣いた。最近泣いたことがないくらい涙がでた。退院後も体重が増えているはずのところが、3日後に病院に行って体重を量ったら体重が減っていて、また悲しくなった。
どうしてなんだろうと思う。

おっぱいをちゃんと吸ってもらうためにミルクは決まった量しかあげられない。でも、おっぱいはほとんど出ない。出ないから足りない。足りないから直ぐ起きる。そして、満たされないから泣き続ける。寝たと思ったら1時間くらいで起きるから、最初の1週間は多分睡眠時間は2〜3時間だった。
必死だったから眠くなかったけど....。
もう、あきらめてしまおうか。と何度も思った。けれど、妊娠しているときに見た夢がわたしを思いとどまらせた。あの夢を見たということは必ず出るようになるはず。そう思って踏ん張った。

産後1週間から1ヶ月半、毎週二回、母乳外来に行ってマッサージと、ドグマチール(胃潰瘍の薬だけどおっぱいをだすプロラクチンというホルモンが出るようになっておっぱいが出るようになるらしい。妊娠してない人が飲んでもおっぱい出るようになるそうだ。)というお薬飲んで、あと、プラセンタの注射を打つ治療を続けた。マッサージしてくれた助産師さん曰く、わたしは乳首の形で損をしたらしい。おっぱいはベイビーが吸ってくれて作られるようになるけど、わたしのはすいやすくない形だから、最初の段階でつまづいたらしい。おっぱいがちゃんと出産前に念入りに乳首のマッサージしなかったことを悔やんだ。

でも、その治療を終えて、満2ヶ月になる数日前に変化が来た。夜3回母乳とミルクをあげていたのに。母乳だけですむようになった。それからまた1ヶ月。今はもっとミルクの回数が減って、時には一日2回しかあげなくてよくなった。今日も、夕方から何度かミルクを飲ませようとしたけど、加えた哺乳瓶をプイッと吐き出して飲まず結局母乳だけでおネンネしてしまった。

6月16日 まだ十分に母乳が出てないころ。
ピカリちゃん必死におっぱいに吸い付いてます。

4ヶ月過ぎた今、ピカリちゃんの起きたての一杯は、おっぱいちゃん。

ああ、愛しのおっぱい。
出てくれてありがとう。

f.